第39報 乾電池の容量測定 その2(mht039_FC28)

===== 豆電球の電圧-電流(V-I)特性と抵抗値、フィラメント温度 =====

 

→ トップページ

2015/12/28 by hiro


1.はじめに

   先に(第38報) 、豆電球を負荷にして単三乾電池の容量を測定しました。
これは単に時間の経過に伴う端子電圧変化を測定したもので、放電終止電圧に至るまでの時間を測定したものです。当然 負荷が変われば放電時間は変わります。
  負荷が変わった場合の放電時間を知るためには放電終止電圧に至るまでのAh(mAh)を知る必要があります。
  そのためには豆電球の電圧-電流特性(V-I特性)を知る必要があります。 そこで、豆電球の電圧-電流の関係を測定しました。

2.測定方法

  電圧は豆電球の両端に電圧計をつないで測定しました。電流は電池と豆電球の間に電流計を入れて測定しました。電圧の測定にはデジタルテスター(M-830C オーム製)を、電流測定にはアナログテスター(305-G TR サンワ)を使用しました。電圧測定のためのデジタルテスターの入力抵抗はMΩのオーダ―であり 豆電球のΩオーダーの抵抗に比べ数ケタ大きいので、電圧測定のためにデジタルテスターに流れる電流は無視できます。
  なお、測定には登山用のヘッドランプを使用しました。その都合で電流計は二つの電池の間に入れました。もともとこの位置に on/off のスイッチがあったわけですが、このスイッチを off にしてこの両端に電流計をつないだわけです。測定対象の豆電球は前報に記した通り Philips 2.5V 0.30A HK です。2.5Vで0.30A流れるという仕様でしょう。


3.測定結果と考察
3.1 測定結果
  測定結果をGrf.1に示しました。このグラフから0.26V以上では電圧対電流関係は直線的であり、0.26V以下では曲線的で電圧の低下に伴い急激に電流が低下しています。
  この傾向は高い電圧ではフィラメントの温度が大幅に上昇しており、フィラメントの抵抗が増加していることに起因します。
  豆電球のフィラメントにはタングステンが使われていますが、タングステンの抵抗値は豆電球が通常に点灯している状態では常温の10倍程の抵抗値になります(Grf.3参照)。したがって、電圧が高いほど電流は流れにくくなるわけです。
  
Grf.1 豆電球の電圧-電流 測定結果

  
3.2 近似式と常温のフィラメントの抵抗
  近似曲線を求めると 0.26V以上では 式1および 0.26V以下では式2となります。
  ところで、電圧ゼロでは電流もゼロ です。したがって、フィラメントの発熱はないのでフィラメントの温度は環境の温度と同じです。そこで、式2の近似曲線の微係数を取り(式3)、
電圧eをゼロにすると常温(この場合22℃)におけるフィラメントのコンダクタンス(G22)が求まります(式4)。

  抵抗はコンダクタンスの逆数ですから式5の通りであり、すなわち、22℃におけるフイラメントの抵抗値(R22)は1.0Ωであると判断できます。

3.3 各電圧におけるフィラメントの抵抗
  Grf.1において各測定点の横軸の値eを縦軸の値iで割るとその点でのフィラメントの抵抗が求まります。Graf.2はそのようにして求めた抵抗です。
Grf.2 豆電球の端子電圧とそのときの抵抗

高い電圧域(1.3V以上)では電圧に対して直線的ですが、低い電圧域(1.3V以下)では緩やかな曲線を描いて低下し0.2V以下では1.0に漸近しています。
常温の抵抗がほぼ1Ωであるに対して 2.5〜2.7Vでは9Ω前後になっています。これで2.5Vで大略0.3A流れることになり豆電球の仕様とほぼ一致します。


3.4 タングステンの温度と抵抗
  Grf.3 にフィラメントの材料であるタングステンの温度と抵抗の関係を示しました。
Grf.3 タングステンの温度と抵抗

  このようにタングステンの温度と抵抗は当然ながら1対1の一定の関係にあります。したがって、Grf.2の電圧と抵抗の関係とGrf.3の温度と抵抗の関係から、各電圧における豆電球のフィラメントの温度を求めることができます。

3.5 各電圧におけるフィラメントの温度
  Grf.4 は各電圧におけるフィラメントの温度を求めた結果です。比較のためにGrf.2で求めた抵抗も併せて示しました。
Grf.4 豆電球のフィラメントの温度

  フィラメントの温度は2.5〜2.7Vで1400〜1500℃になっていることがわかります。


4.ま と め
4.1 豆電球の電圧-電流特性と抵抗値
     電圧0.26Vで電流133mA、電圧2.7Vで電流300mA、この間 電圧に対し電流はほぼ直線的(比例ではない)に変化しています。 0.26V以下では急激に電流は減少します(Grf.1)。
  各領域の電圧と電流の関係は近似式として 式1、式2 が得られました。

4.2 豆電球のフラメントの抵抗値
      式2から、電流ゼロ(したがって電圧もゼロ)での微係数 de/di をとると、その値は1となりました(式4、5)。すなわち、常温(22℃)での豆電球の抵抗は1Ωと云うことになります。
  2.7Vでは9Ω( 2.7/0.3=9 )と高い値になっています(Grf.2、4)。これはフラメントが白熱状態で高温(1400〜1500℃)になっているためです。フィラメントの材料であるタングステンの温度と抵抗率との関係をGrf.3に示しました。

4.3 豆電球のフラメントの温度
  Grf.2に示すようにフィラメントの抵抗値が求まりました。一方、フィラメントの材料であるタングステンの温度と抵抗値の関係はGrf.3の通りです。これら二つの関係からフィラメントの温度を求めました。その結果、フィラメントの温度としては 2.7V 付近では1400〜1500℃、1.5V付近では約1100℃と判断されました(Grf.4)。

前報 で豆電球を負荷とした場合の単三乾電池の放電時間と端子電圧の関係を測定しましたが、今回 求めた豆電球の電圧と電流の関係(式1、式2)をもちいて、次の報告では Ah で単三乾電池の容量比較を行ってみたいと思います。

以上  

  
Webページの作成に使用したH/WとS/W
日向ぼっこ JR籠原駅南口(FC03)

以上
inserted by FC2 system