第21報(mht021_C2E)

ワードにおけるバージョン毎の オブジェクト--写真、イラストなど--の扱いの違い


−−−−−オブジェクトの複数選択とグループ化−−−−−

 

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2012/2/20 3/1 改訂 by hiro


改訂部分:第2.1節、第3.1節の「ワード2007の写真系はグループ化できる」と言う記述は誤りでした(表1が正しい)ので「グループ化できない」に替えました。
これにともない各節および第4.4節の関係部分の記述を変更しました。(3/1 m(-_-)m )


目 次

  1.まえがき
  2.検討結果概要
  3.検討結果詳細
     ワード2007
     ワード2003
     ワード2010
     描画キャンバスについて
  4.オブジェクトを統一的に扱う方法---まとめ に替えて
  5.最後に
  文献/参考資料


1.まえがき

 ご承知のとおり、Microsoft ワードは2003から2007に変わって大幅に外観と操作法が変わりました。しかし、一皮剥くと多くの部分は同じです。もちろん、新たに加わった機能も多々あります。
 また、扱いや性質が変わったものもあります。その主なものの一つにワードに貼り付けられるオブジェクトの選択とグループ化に関する扱い/性質の変更があります。
 この変更で操作に戸惑ったユーザーが多いことと思います。そこで、ワード2010も含めて各バージョン毎での主なオブジェクトの性質の違いを比較/検討しましたので、その結果をここに報告いたします。
 なお、使用したワードのバージョンは次のとおりです。
     ワード2010--- Word 2010 (試用版) 14.0.6112.5000(32bit)
     ワード2007--- Word 2007 (12.0.6545.5000) SP2 MSO (12.0.6562.5003)
     ワード2003--- Word 2003 (11.8328.8341) SP3

2.検討結果概要

 検討結果を表1にまとめました。この表はクリックすると拡大されます。表中で [オブジェクトの選択] とあるのは、オブジェクト選択ポインター(オブジェクト選択ポインター)を表示して、これでオブジェクト全体を囲む選択操作のことです。

 なお、何れのオブジェクトも「文字の折り返し」が [行内] に設定されている場合には他のオブジェクトと選択はできません。注意が必要です! したがって、以下の検討は全て オブジェクトの「文字の折り返し」は [行内] 以外に設定して行っています。

表1 ワードのバージョン毎のオブジェクトの扱い
表1

概要は次の通りです。詳細については第3章を併せてご覧ください。

2.1 ワード2007
 ワード2007のオブジェクトには二つの系統があります。一つは写真を中心とする系統で、もう一つは図形(オートシェイプ)を中心とする系統です。各系統ごとでは複数のオブジェクトの選択ができますが、他の系統のオブジェクトを含む選択はできません。複数選択したオブジェクトのグループ化は図形系についてはできますが、写真系ではできません。そのほか詳細は表2を参照ください。
 したがって、ワード2003の操作に慣れたユーザにとっては戸惑うことが多いところです。
 実用面では、(1) 写真に説明文を書込んだテキストボックスを貼り付けた場合、これらをグループ化できないので、写真を移動すると説明文がおき去りになる。(2) 案内地図などを図形(オートシェイプ)を使って作成し、これにランドマークとして写真またはイラストを入れた場合、この写真またはイラストを案内図と一体化 (グループ化) できない。などの不具合を生じます。このような場合の対応を第4章に記しました。

2.2 ワード2003
 ワード2003では画面上に貼り付けた各オブジェクトは区別なく複数選択でき、また、グループ化することができます。前節のワード2007の(1)、(2)のような不具合は生じません。

2.3 ワード2010
 ワード2010は2007に比べるとだいぶ扱いやすくなりました。すなわち、よく使うオブジェクトは区別なく選択でき、グループ化できます。
 それでも2003のようにはいきません。すなわち、「オブジェクトの選択」ポインター(オブジェクト選択ポインター)により全体を囲って行う選択がうまくいきません。また、描画キャンバス同士、および 描画キャンバスと他のオブジェクトの間での選択はできるのですが、グループ化ができません。

3. 検討結果詳細

3.1 ワード2007

ワード2007では二つの性質の違うオブジェクトがあります。とくにそれらに名前が付いていないので、一つは写真系、もう一つは図形系と呼ぶことにします。

  • 写真系には
     写真、イラスト(クリップアート)、スマートアートが属しています。
     写真系のオブジェクトを選択したときのハンドル (オブジェクトの四隅と各辺の中央に付く印) は青色の中空の小さな○ と 小さな□です。スマートアートだけは全体が淡青の半透明の枠で囲まれます。
  • 図形系には
     図形(オートシェープ)、テキストボックス、ワードアート、描画キャンバスが属しています。  図形系のオブジェクトを選択したときのハンドルは青色の中実の小さな● と 小さな■です。描画キャンバスだけは四隅と各辺の中央に黒の太い実線が付きます。

 写真系と図形系のオブジェクトは同時には選択できません。具体的には、写真とテキストボックスは同時に選択はできません。写真系同士、図形系同士なら選択できます。グループ化は写真系はできません。図形系はできます。
 図1は合成した画像です。ワード2007の画面上でこの図のように同時に写真系と図形系のオブジェクトを選択することはできません。  図1は、先ず写真系のみを選択してスクリーンショットを撮って、次に図形系のみを選択してスクリーンショットを撮って、これらを合成(張り合わせた)して作りました。
 オブジェクトの選択についてもう少し詳細に述べます。例えば、図形系をshift+クリックで複数選択しておいて、次に写真系をshift+クリックすると、これまで選択してあった図形系の選択は全て解除されてしまいます。逆に写真系をshift+クリックで先に複数選択しておいた場合には、次に図形系をshift+クリックしても図形系は選択できず、選択されている写真系はそのままの選択状態を保ちます。
 また、[ホーム]→[編集]→[選択]→[オブジェクトの選択で]で白い矢印ポインター(オブジェクト選択ポインター)を表示してオブジェクト全体を囲む操作では、図形系のみが選択され写真系は選択されません。

図1 W2007--写真系、図形系の選択状態
図1

 エクセルのオブジェクト(表、グラフ)は、 ワードに貼り付けるときの形式によって写真系であったり、図形系であったりします(表2 参照)。
 エクセルのグラフは [ホーム]タブ→[形式を選択して貼り付け]→ [Microsoft グラフィックオブジェクト] として貼り付けると、淡青の枠で囲まれ、右クリックメニューからグラフの種類を変えるなどの編集ができます。このオブジェクト (グラフ) は写真系に属します。
 さらに、 [ホーム]タブ→[形式を選択して貼り付け]→ [Microsoft Office Excel グラフオブジェクト] として貼り付けると、OLE貼り付け となり、ダブルクリックでエクセルが立ち上がり、エクセルで編集できます。
 エクセルの表についても、[Microsoft Office Excel ワークシートブジェクト] として貼り付けると OLE貼り付け になります。これらのグラフおよび表は図形系に属します(表2 参照)。

表2 W2007---表2 写真系と図形系
表2

 なお、エクセルの表もグラフも [ホーム]タブ→[形式を選択して貼り付け] から図(Widowsメタファイル、ビットマップ、JPGなど) として貼り付ければ写真系となります。もちろん、この場合はエクセルのオブジェクトとしての編集はできません。
 エクセルの表は、通常の貼り付け操作 ([ホーム]タブ→[貼り付け]) および [ホーム]タブ→[形式を選択して貼り付け]→ [リッチテキスト形式] または [HTML形式] で貼り付けるとワードの表に変換されます。また [テキスト] または [Unicodeテキスト] として貼り付けると、表の各行がワードの通常画面の各行にタブ区切りの文字列として貼り付けられます。


3.2 ワード2003

 ワード2003では全てのオブジェクトは同じ性質で一律に同じように扱えます。すなわち、写真でもオートシェープでもワードアートでも同時に選択でき、かつ、グループ化できます。図2は同時に各オブジェクトを選択した状態を示しています。
 オブジェクト選択ポインター(オブジェクト選択ポインター)でも全てのオブジェクトを選択できます。  エクセルのオブジェクト(表、グラフ)との間でも複数選択およびグループ化ができます。

図.2 W2003---各オブジェクト選択状態
図2

 オブジェクトを選択したときのハンドルは中空の黒の小さな○のみです。□は付きません。○の大きさは2007の場合よりも少し小さめです。テキストボックスでは中空の○の他に細かい網目の枠が付きます。描画オブジェクトは四隅と辺の中央に太い黒線が付いて、この点では2007と同じですが、2007は青色の細かい点線が付くのに対して2003ではハッチングの枠が付きます。スマートアート(組織図)には細かい網目の枠が付きます。2007では淡青色の半透明の枠が付きました。
 なお、ワード2003では表2で図形系となる条件(Excelのワークシートオブジェクトおよびグラフオブジェクト)で貼り付けたものもハンドルは小さな中空の○であり、他のオブジェクトと同様で複数選択もグループ化もできます。

3.3 ワード2010

 ワード2010では主なオブジェクトについては同じ性質で一律に同じように扱えます。すなわち、写真でもオートシェープでもワードアートでも一律に選択でき、かつ、グループ化できます。図3に各オブジェクトを選択した状態を示しました。  選択されたオブジェクトのハンドルは、描画キャンバスとスマートアート以外では中空の○と□が付きます。○と□の色は2007と同じ青色で大きさも2007の写真系のそれと同じです。描画キャンバスとスマートアートは淡青の半透明の枠に包まれます。選択された各オブジェクトは、もちろん、グループ化ができます。
 以上のオブジェクトは図の系統としては写真系のようです。
 エクセルの表やグラフを、表2 (ワード2007)で図形系になる条件であるExcelのワークシートオブジェクトおよびグラフオブジェクトとして貼り付けたものは、ハンドルに青色の中実の●と■が付き、これらは、これら同士では複数選択できグループ化もできますが、ハンドルに○と□が付くもの(写真系)とは複数選択ができません。したがって、ワード2010は結局、よく使う図形(オートシェイプ)やテキストボックス、ワードアート、描画キャンバスを写真系の仲間にいれた、と言うことのようです。したがって、表1で「図形系と写真系の区別の有無」の行でワード2010は「主なものは写真系に統一」としました。
 なお、エクセルのオブジェクトは表2から分かるように図(写真系)としても貼り付けられるので、写真系のオブジェクトと複数選択およびグループ化が必要なばあいには図として貼り付ければよいわけです。もちろん、この場合はエクセルを起動しで編集はできませんので、編集を済ませた上で貼り付ける必要があります。

図3 W2010---各オブジェクト選択状態
図3

 ワード 2010では「オブジェクトの選択」ポインター(オブジェクト選択ポインター)により全体を囲って行う選択は全く機能しません。そもそも、オブジェクト選択ポインターを表示して、クリックしてドラッグしても囲むための枠 (2007では黒色の点線枠)が表示されません。もちろん、目見当で全体を包んでも何れのオブジェクトも選択されません。描画キャンバスの中では機能します。オブジェクトの選択ポインターは描画キャンバス専用のようです。

3.4 描画キャンバスについて

 描画キャンバスの中では各バージョン (2007、2010、2003)とも何れのオブジェクトに対しても区別なく複数選択可能で、グループ化も可能です。オブジェクト選択ポインター(オブジェクト選択ポインター)による選択も各バージョンで可能で、描画キャンバス内にマウスを移動すると自動的にポインターはオブジェクト選択ポインターに変わります。

 2010ではクリックしてドラッグするとその範囲が淡青色のベールで包まれ、この範囲のオブジェクトが選択されます(中空の○、□が付く)。なお、2010ではキャンバス内の写真の拡大縮小はshiftキーを押しながら行なわないと、縦横比が変わります。
 図4〜6に各バージョンにおけるオブジェクトの選択状態を示します。描画キャンバスそのものは描画キャンバス内の余白をクリックすると選択されますが、描画キャンバス内のオブジェクトを選択しても選択状態になります。

W2007キャンバス中選択状態
図4
W2010キャンバス中選択状態
図5
W2003キャンバス中選択状態
図6

 描画キャンバス同士の選択は、何れのバージョン (2007、2010、2003)でも可能ですが、描画キャンバス同士のグループ化は2007と2003はできますが、2010ではできません。  描画キャンバスと他のオブジェクトとの選択は、2010と2003は全てのオブジェクトについて可能ですが、2007は図形系とのみ可能で、写真系とは不可です。
 また、描画キャンバスと他のオブジェクトとのグループ化は2003では全てのオブジェクトと可能ですが、2007は図形とのみ可能で、2010はどのオブジェクトとも不可です。
 この辺りはバージョンごとの違いが入り組んでいます。表1の下部を参照ください。
 また、描画キャンバスへのオブジェクトの貼り付けと取り出しに付いても2007と2010ではそれぞれ違いがありますので、表1の中程を参照ください。

4.オブジェクトを統一的に扱う方法---まとめ に替えて

 このようにオブジェクトの性質がバージョンによって違っていて扱いが違うと、ユーザーとしては戸惑ってしまします。
 私には2007のようにオブジェクトの性質を二つに分けておくことのメリットは認められません。全てのオブジェクトを、できるだけ手間をかけずに、2003のように統一的に扱えることがベストです。そこで、その方法を探ってみました。

4.1 互換モードを使う

 最も簡単な方法はワード2007および2010をワード97〜2003互換モードで使うことです。  互換モードで使うためには、2007あるいは2010で作成した文書をワード97〜2003文書として一旦保存することです。こうすると、オブジェクトは全て2003の性質を持ったオブジェクトに変わりますので、戸惑うことなく使えます。ただし、この場合2007、2010で新規に加わった機能は使えませんが、私は通常では敢えて新規の機能を使うことはないので、互換モードで処理するようにしています。  もちろん、ワード97〜2003文書として保存することでファイルの拡張子は「doc」に変わりますから、バージョン97から2003のワードで編集することもできます。
 図7と図8は、各オブジェクトをそれぞれ2007と2010で作成し これを互換モードにして、オブジェクトを選択したときの状況です(クリックで拡大表示)。
 オブジェクトを選択したときのハンドルはいずれの場合も青色の●および■になっています。描画キャンバスだけは太い黒線です。

W2007互換モードでの選択状態
図7
W20010互換モードでの選択状態
図8

 この図のように各オブジェクトを一元的に同時に選択できます。もちろん、オブジェクト選択ポインター(オブジェクト選択ポインター)でも同様に選択できます。
 ただし、図7、図8から分かるように、ワード2007および2010で作成したスマートアートは図に変換されています。したがって、図として、そのまま利用することはできますが、互換モードに変換後にはスマートアートとしての編集はできません。
 ワード2010で作成したワードアートはテキストボックスに変換されています。フォントはワードアートのときのフォントです。
 図8の中程のワードアートは互換モードの上で改めて作成したものです。もっとも、2010の上でワードアートを予め図に変換 ([コピー]→[形式を選択して貼付]→Windowsメタファイル、JPGなど) しておけば互換モードにしても図としてそのまま残るので、改めて互換モードの上で作成する必要はありません。
 一般に、新規機能1)で作成したオブジェクトは互換モードへの変換の際に画像(図)に変換されるとされています2)が、ワードアートはこのようにテキストボックスになってしまいました。

4.2 描画キャンバスを使う

 もう一つの方法はオブジェクトを全て描画キャンバスの上に貼り付けることです。このことについては第3.4節で述べたので省略します。
 なお、ワード2003では、描画キャンバスは私にとっては無用の長物でした。したがって、デフォルトでは図形を描く場合 勝手に表示さるので、設定を変更して表示されないようしていたほどです。逆にワード2007および2010では描画キャンバスはデフォルトでは表示されるようになっていません。意識して表示するようにしなければならず、また、一般に描画キャンバスの書式設定の変更も必要で少々面倒です。

4.3 描画キャンバスを図形系への変換手段に使う

 ワード2007に限って有効な方法です。
 この方法は、あらかじめ描画キャンバスを作っておいて、これに写真系のオブジェクトを[コピー→貼付け]します。次に、このオブジェクトを[ドラッグ→ドロップ]で描画キャンバスから引き出します。引き出されたオブジェクトは図形系に変わっています(表1の中程を参照)。

W2007 描画キャンバスによる写真系→図形系変換
図9

 図9は引き出したオブジェクト(図形系に変換された朝顔の写真)をクリックして選択した状態です。図形系の特徴である青色のハンドル●と■が付いています。
 これで、図形系である図形(オートシェイプ)やテキストボックスなどと同時選択ができ、グループ化もできます。
なお、写真系のオブジェクトの大きさが描画キャンバスのサイズよりも大きいと[コピー→貼付け]で描画キャンバス中に入りませんので、一旦ワードの画面に貼り付けて大きさを確認/調節した上で描画キャンバスに[コピー→貼付け]するとをお奨めします。
 この方法は、変換の器としての描画キャンバスをあらかじめ準備したり、[コピー→貼付け]および[ドラッグ→ドロップ]が必要なのでかなり手間がかかります。

4.4 図形系を写真系に変換する

 ワード2007および2010の図形系のオブジェクト(エクセルのオブジェクトも含む)は[コピー]→[形式を選択して貼り付け]で写真系(WindowsメタタイルやJPGなど)に変えることができます。
 こうすることによって、2007では全てのオブジェクトの複数選択が可能になります。しかし、前述のとおりグループ化はできません。2010では複数選択は勿論のことグループ化も可能となります。ただし、写真系に変換されたオブジェクトはそのオブジェクト固有の図形系としての編集はできなくなるので、変換前に必要な編集をしておく必要があります。

5.最後に

 以上のように、ワード2007および2010で複数選択およびグループ化を行う方法はいくつかありますが、それなりに手間がかかります。私は互換モード(第4.1節)が最も手間がかからず、扱いやすいので、通常はこの方法を使っています。機能はワード2003までの範囲ではありますが、最後までオブジェクトそのものの固有の編集も行うことができます。
以上

文献/参考資料

  • ワード2007・2010の新しい機能(解説)
  • MicrosoftのWebサイトで「新しいバージョンのファイルを以前のバージョンのファイルに変換すると新しいバージョンの独自機能で作成したオブジェクトは画像になる」という内容の記事を見た覚えがあります。URLご存じの方教えてください。

資料作成に用いたソフトウエア

以上
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